EXHIBITIONS

沖潤子「約束」

2024.04.26 - 05.25

Junko Oki Blink 2 2024 Cotton, silk 41.5 x 32.3 x 4.0 cm © Junko Oki, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

 KOSAKU KANECHIKAで、沖潤子による個展「約束」が開催されている。

 沖潤子は、古い布や道具が経てきた時間、またその物語の積み重なりに、刺繍と沖自身の時間の堆積を刻み込み、紡ぎ上げることで、新たな生と偶然性を孕んだ作品を発表してきた。山口県立萩美術館・浦上記念館で2020年から1年間展示された個展「anthology」では、全国から寄せられた7000個あまりの糸巻きを用い、新たに紡ぎ生まれたインスタレーション作品を展示。その後、KOSAKU KANECHIKAで開催した個展「よびつぎ」では、「anthology」の出展作品に手を入れ直し、展示された。

 沖曰く、そこには「新旧の時間が抱擁しあっている」という。存在してきたすべてのもの、過ぎ去ったが確かにあった時間。いくつもの時間の層を重ねることで、違う風景を見つけるということが沖の制作の核にある。また、その風景とは、つくり手の意思とは無関係に作品から現出するものだと沖はとらえている。

 一針ずつ糸を刺し続けることで沖の制作は進む。そのプロセスにおいて糸はもつれ塊となり、それを沖は解かずにそのまま縫い付けたりもしている。緻密で静的なイメージのある「刺繍」という枠には収まらない沖の作品は、緊張感とダイナミズムを孕む。物質の持つ真実と、作家の真実、そして時間が混ざりあって生まれる世界観であり、それを沖は「約束」という言葉で言い表しているのかもしれない。本展では、新作10点を公開している。