EXHIBITIONS

武田龍、大石一貴 " HANNAH "

2024.01.27 - 02.25

左:武田龍 Naiad 2023
右:大石一貴 Catch the root 2023

 parcelで、武田龍と大石一貴による二人展「HANNAH」が開催される。

 武田は、1989年茨城県生まれ、2016年武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業。現在、都内にアトリエを構え制作を行なっている。写真、映像、パフォーマンスなどのメディアを扱ったのち、近年では絵画作品を中心に制作、発表。武田は偶発的にできたシミや傷をとっかかりに強調したり覆い隠すことによって喚起されるイメージを拾いながら絵画を制作している。そこには武田が幼少期を過ごした田舎の森での経験や質が視覚だけでなく聴覚や嗅覚、触覚を通して現れている。

 またこうした制作方法の背景には漢字の起源とされている甲骨文字からの影響がある。動物の骨を火で炙ることで偶発的にできるひび割れから生まれた文字と、それがやがて象形文字となっていく歴史を自らの制作プロセスと重ねているのだ。

 大石は、1993年山口県生まれ、2018年武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻彫刻コース修了。19年8月より東京都小平市でスタジオ&スペース「WALLA」を共同運営しながら制作活動を行っている。塑像の技法を用いた立体作品や詩で構成するインスタレーションを発表するなど、ジャンルに囚われない表現を追求。フランスの詩人であるフランシス・ポンジュの著作『物の味方』に影響を受けたと語る大石の制作の背景には、人の不在によって顕になる物たちの世界への視点がある。

 22年の個展「For instance,Humidity」では、水粘土が漏斗によって集められた水によって会期中に段々と形を変えていくインスタレーション作品を発表。こうした近年の制作には制作者という主体を持ちながらも、人間の時間感覚から逃れようとする眼差しを見ることができる。

 異なる表現方法で制作するふたりだが、どちらも彫刻の教育を受けたこと、SF的な想像力、生物学や重力へ興味など多くの共通点を見出すことができる。本展では、武田による新作を含む絵画作品と、大石によるセメントや植物、水粘土を使った彫刻・インスタレーション作品を発表。