2021.12.24

ロニ・ホーン展から「博物館に初もうで」まで。年末年始も見られる展覧会をピックアップ

森美術館の「アナザーエナジー展」からポーラ美術館の「ロニ・ホーン展」まで、年末年始も見ることのできる展覧会を首都圏を中心にピックアップ。予約方法や注意事項については、各館の公式ウェブサイトを参照してほしい。

ロニ・ホーン展より
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大晦日・元旦も開館の展覧会

 まずは年末年始の無休で開館する展覧会をピックアップ。六本木・森美術館の「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」展(〜1月16日)は、近年、ジェンダーや人種、民族、信条などのアイデンティティの不均衡を正し、ダイバーシティを重視する動きが世界中に拡大しているなか、世界各地で挑戦を続ける女性アーティストの活動に光を当てる展覧会だ。16名の参加作家の年齢は71歳から105歳までと幅広く、出身地は世界14ヶ国におよび、現在の活動拠点も多岐にわたる。いずれも50年以上という長いキャリアを誇るアーティストたちが、それぞれ放つエナジーをぜひ会場で体感してほしい。

展示風景より、三島喜美代《作品2-A》(2021)と《作品92-N》(1990-1992)

 温泉地・箱根のポーラ美術館も年末年始は無休だ。同館では、現代美術の第一線で活躍を続けるアーティスト、ロニ・ホーンの日本初となる美術館個展「ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」展(〜3月30日)が開催中。ポーラ美術館が大型企画展としては初めて同時代の作家を単独で取り上げる本展。近年の代表作であるガラスの彫刻作品をはじめ、1980年代から今日に至るまでの約40年間におよぶ実践の数々を通し、ロニ・ホーンが一貫してモチーフにしてきた「自然」を感じたい。

「ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」展展示風景より、《鳥葬》(2017-2018)

元旦のみ休館の展覧会

 渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「ザ・フィンランドデザイン展─自然が宿るライフスタイル」(〜1月30日)は元旦を除き開館する。本展は、デザイン大国のひとつとして知られているフィンランドのおけるデザインの誕生と発展のストーリーを紐解き、今日まで続く独特のデザイン様式を探るもの。ヘルシンキ市立美術館監修のもと、コレクション・カッコネンやタンペレ市立歴史博物館、フィンランド・デザイン・ミュージアムなど、フィンランド各地の貴重なコレクションから約250点の作品と約80点の関連資料が集結。アルヴァ・アアルトやトーベ・ヤンソンなど世界的に知られるアーティストや、日本ではこれまで紹介される機会が少なかったアーティストを含め、50人以上のデザイナーやアーティストの作品が並ぶ貴重な機会となっている。

ザ・フィンランドデザイン展─自然が宿るライフスタイル」展示風景より、左からアルヴァ・アアルト《アームチェア・パイミオ》(1940年代)、《キャンチレバーチェア31(現:42 アームチェア)/パイミオサナトリウム竣工時のオリジナル製品》(1931)、《スツール60》(1940年代)、イルマリ・タピオヴァーラ《ドムスチェア》(1946)

 今年、原美術館とハラ ミュージアム アークが統合して生まれ変わった原美術館ARCも元旦以外開館。同館では現在、「虹をかける: 原美術館 / 原六郎コレクション 第2期 (秋冬季)」(〜1月10日)が開催中だ。原美術館の豊富なコレクションとともに、リニューアルされた奈良美智、宮島達男、森村泰昌らの人気常設作品も堪能したい。

 なお、ギャラリーとしてはルイ・ヴィトンが運営する2つのアートスペース「エスパス ルイ・ヴィトン東京」と「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」も元旦を除き営業(ただし12月31日は時短)。エスパス ルイ・ヴィトン東京ではギルバート&ジョージの、エスパス ルイ・ヴィトン大阪ではゲルハルト・リヒターの個展が開催されており、どちらも大作を楽しめる。

エスパス ルイ・ヴィトン東京の展示風景より、ギルバート&ジョージ《CLASS WAR, MILITANT, GATEWAY》(1986)
エスパス ルイ・ヴィトン大阪の展示風景より

大晦日・元旦のみ休館の展覧会

 上野の森美術館の深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」(〜1月31日)と三菱一号館美術館の「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」(〜1月16日)は、大晦日と元旦を除き開館する。

 深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」は、透明樹脂を繰り返し流し込みながら、アクリル絵具で絵を重ねて立体的な金魚を描くという独自の技法を使った作品で知られる美術家・深堀隆介の大規模個展。6章構成によって、深堀の作風を象徴する、樹脂を重ねて描く積層絵画から、大型の平面作品や様々な素材を支持体に展開される作品、新たな表現を模索した作品、具象と抽象のあいだでのさらなる展開まで、深堀の制作の全体像に迫るものだ。

展示風景より、深堀隆介《方舟2》(2015)

 「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」展は、珠玉の印象派コレクションを誇るイスラエル博物館の約2500点の近代美術館コレクションから、印象派を中心に約70点の作品を厳選して展覧。印象派に先駆けたバルビゾン派のコロー、ドービニー、そしてモネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、この流れを発展させたポスト印象派のセザンヌ、ファン・ゴッホ、ゴーガン、さらに印象派の光と色彩の表現を独特の親密な世界に移し変えたナビ派のボナールやヴュイヤールなど、印象派の光の系譜をたどる。出品作の大半は日本初公開だ。

展示風景より、クロード・モネ《睡蓮の池》(1907)

1月2日から見られる展覧会

 12月28日から休館に入る東京都現代美術館も1月2日には開館する。同館では、アートと音楽の交差点で活動し、多様な作品を発表してきたクリスチャン・マークレーの日本国内初となる大規模個展「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」、寒川裕人による日本拠点のアーティストスタジオ「EUGENE STUDIO(ユージーン・スタジオ)」の初個展「ユージーン・スタジオ 新しい海 After the rainbow」、そして映像と彫刻を組み合わせた「ヴィデオ彫刻」で知られるヴィデオ・アートの先駆者のひとり・久保田成子の回顧展「Viva Video! 久保田成子展」が同時開催中(いずれも〜2月23日)。どの展覧会も必見だ。

「ユージーン・スタジオ 新しい海 After the rainbow」展示風景より、ユージーン・スタジオ 《海庭》(2021)

 同じく28日から休館の東京国立近代美術館の「柳宗悦没後60年記念展 『民藝の100年』」も2日から開館する。柳宗悦、濱田庄司、河井寬次郎によってつくられた美の概念「民藝」。東京国立近代美術館で、総点数450点を超える膨大な作品と資料を通して「民藝」の活動を振り返る本展は、「モノ」の蒐集にとどまらない民藝の活動にもフォーカスしている点に注目したい。

「柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年」より

 日本の文化に触れることのできる企画としては、東京国立博物館による恒例の正月企画「博物館に初もうで」(会期:1月2日〜31日)をチェックしよう。2003年より実施されてきた同企画。2022年は干支「虎」にちなみ、日本だけでなく東アジアから南アジアまで、虎を表した作品に注目。干支をテーマにした作品の特集や同館の新春の目玉である、国宝《松林図屛風》(長谷川等伯筆)をはじめ、本館の各展示室では新年の訪れを祝して、竹や若松などの模様が散りばめられた能装束《唐織 淡茶紅緑段霞菊地紙模様》といった吉祥作品や名品の数々を展覧する。

 なお首都圏以外では、金沢21世紀美術館の「ぎこちない会話への対応策―第三波フェミニズムの視点で」と「フェミニズムズ」(12月29日〜1月1日休館)が1月2日からオープン。京都国立博物館は新春特集展示として、「寅づくし─干支を愛でる─」を2日から開催する(~2月13日)。また今年リニューアル開館した八戸市美術館は大晦日と元旦を除き開館する。

「ぎこちない会話への対応策」展示風景より、さとうりさ《双つの樹(白)》(2020)

*一部内容を追加しました(12/29)