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2022.7.24

「無」の状態に新しい始まりを見出し、「完成」のない絵画を描く。富田直樹インタビュー

大都市近郊の風景やフリーターの若者たちなどをモチーフに、厚塗りの油絵具で対象を描き出す富田直樹。約2年半ぶりとなったMAHO KUBOTA GALLERY での新作展に際して、これまでの作品に通底するテーマや制作の背景について話を聞いた。

聞き手・文=岩垂なつき(美術批評)

展示会場にて 撮影=菅野恒平

「無」の状態に新しい始まりを見出し、「完成」のない絵画を描く

 富田直樹はフリーターや郊外の写真を忠実に描いた絵画で知られる作家である。東京藝術大学大学院を修了した2015年、東京オペラシティアートギャラリーの「project N 60」にて個展を開催し、さらに「CAF賞2015」にて前澤友作特別賞を受賞。その後もコンスタントに発表を続け、現在脚光を浴びる作家のひとりである。

 富田が注目されるきっかけともなったフリーターたちのポートレイト「No job」(2016)はファッション雑誌の街角スナップを絵画に落とし込んだものであるが、このような作品は京都芸術大学に在学していた学部生時代からすでに制作していたのだという。「初めにフリーターを描いたときは自分のなかに明確な考えがあったわけではなく、ほかの人が扱っていないモチーフを自分のなかでしっくりくる技法で描いてみようと思っただけだったんです。でも不思議と感覚的には心地良いものがあり、続けているうちに様々なモチーフに展開していきました」。その後、富田の描画対象は空きテナントや郊外の風景、建設中のビルなどに広がっていく。

「何者でもない」という可能性