INTERVIEW - 2017.12.26

【ギャラリストに聞く】
スペース23℃ 榎倉充代

「もの派」の作家として知られる榎倉康二。その妻である榎倉充代が2000年に開廊した「スペース23℃」では、榎倉をはじめ、作家と生前交流のあったベテラン作家や、若手作家のグループまで、幅広い作品を紹介してきた。これまでの活動や現在について、榎倉充代に話を聞いた。

文=野路千晶

2017年6月に新設したスペース。背景に見えるのは、作家の吉田克郎が作品制作中の榎倉康二をとらえた写真 Photo by Chika Takami

2017年6月に新設したスペース。背景に見えるのは、作家の吉田克郎が作品制作中の榎倉康二をとらえた写真 Photo by Chika Takami

作品を知るきっかけの場所

アトリエをギャラリーに

 東京・世田谷、等々力駅から徒歩7分ほどの閑静な住宅街の一角にスペース23℃はある。スペース23℃がオープンしたのは2000年の10月。「当初はギャラリーを始める予定はなかったんです。ところが夫が亡くなり、仕事場・アトリエとして使う予定で越してきた自宅の部屋が一室空いてしまって。同時に、夫の作品が大学のアトリエから自宅に戻ってきたので、せっかくなら展示できたらと思い、スペース23℃を設立しました」。そう話すのは、ギャラリーの代表を務める榎倉充代だ。

スペース23℃ 外観 Photo by Chika Takami

 榎倉の夫は、1960~70年代の美術動向「もの派」の作家としても知られる榎倉康二。60年代より、布にオイルを染み込ませるシリーズや、コンクリートを壁状に立ち上げ、その上からオイルを染み込ませた立体作品を発表するなど、独自の方法で物質と対峙し、95年に逝去するまで精力的に作品発表を続けてきた。

ベテランから若手まで

 これまでスペース23℃では榎倉康二のほか、チェーンソーで木材を荒々しく削ることで成形された彫刻作品などを発表する戸谷成雄(しげお)、枕木や鉄などの物質感の強い素材を空間全体に展開させた作品を手がける高山登、そして竹などの自然素材、金属板と皮などを用いた大型作品を制作する加藤アキラや、平面作品に加え、ロープや発泡スチロールの棒といった既存品からなるオブジェの屋外展示を行う内藤晴久など、大規模な作品で知られる作家を多数紹介。また、世界を旅しながら大型のドローイング作品などを手がけた八田淳は、遺作の展示を行った。そうしたベテラン作家のいっぽうでは、榎倉康二、高山登、藤井博、羽生真が、高山の下宿先の庭で1970年に行った展示「SPACE TOTSUKA70」に基づき、作家の石井友人、榎倉冴香、地主麻衣子、高石晃、学芸員の桝田倫広が自主企画展を開催。この展覧会では、室内の作品展示に加えて、ギャラリーから望む庭に大きな「穴」が出現した。「スペース23℃は自宅の庭だから、自由な展示が可能。榎倉という作家のそばにずっといて、作家を取り巻く状況は私なりにわかっていたつもりですが、いまの時代は作家として生きることがことさら大変なように見えます。でも、想像がつかないものを見るのは楽しいですから、せめてスペース23℃では自由に活動してもらえたらと思っています」。

2017年6月に開催された、リニューアルオープニング展「榎倉康二展」の様子 撮影=桜井ただひさ

新スペースでのリスタート

 2016年、スペース23℃は自宅を利用した展示室を閉鎖。翌年6月に、同じ敷地に新たな建物を建設し、再びスタートを切った。新スペースでのオープニング展は、榎倉康二展。以前の空間では設計上、壁にかけることのできなかった大型作品も、新たな場所では展示をすることが可能になった。他のギャラリーや美術館で展示をされる機会の多い榎倉作品だが、榎倉充代は、スペース23℃を、それら作品を知るための「アンテナショップ」と表現する。「その表現が本当に正しいかはわからないですけど(笑)。何かあったらここに来て、気になることを聞いてほしい。榎倉や他の作品を知るための取っ掛かりになるのであれば嬉しいです」。

もっと聞きたい!

Q. お気に入りの作品は?

 榎倉康二の《インスタレーション(oil on paper)》です。薄い紙を何枚かつなぎあわせたこの作品は、作品としてとても力強く、染み込ませたオイルが時間とともに違う顔を見ていくところが気に入っています。写真は、旧西ドイツのアーヘン市立美術館での展示風景です。

榎倉康二 インスタレーション(oil on paper) 1974 Photo by Chika Takami

Q. 愛用の一品は?

 スペース23℃で使用している作業台です。絵具の跡がたくさん残っていますが、これは元々、榎倉のアトリエで道具箱として使用されていたもの。以前はオープニングパーティでテーブルとして使用するなど、なにかと重宝していました。開廊以来、ずっとそばに置いています。

Photo by Chika Takami

 (『美術手帖』2018年1月号「ART NAVI」より)