INSIGHT - 2017.12.20

30のトピックスで振り返る。
2017年のアートシーン

個人美術館の相次ぐ開館や、オークションでの巨額落札など、様々な出来事があった2017年。主にウェブ版「美術手帖」で取り上げたニュースを中心に、2017年のアートシーンを30のトピックスで振り返る。

■1月

・2016年にこの世を去ったミュージシャン、デヴィッド・ボウイの回顧展が天王洲の寺田倉庫でオープン。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館でスタートし、世界9ヶ国で総動員数160万人を記録したこの展覧会は、実際に着用した衣装や直筆の歌詞、絵コンテ、レコード、映像など、300点以上の展示品によって構成。約3ヶ月の会期で12万人の来場者数を記録した。

>>全世界で160万人動員、デヴィッド・ボウイ大回顧展が日本上陸

・アメリカではドナルド・トランプ大統領が誕生した今年。同国内ではアーティストや批評家たちがこれに反発。「#J20 ART STRIKE」と題するストライキを呼びかけた。このストライキではリチャード・セラをはじめ、シンディー・シャーマン、ジョーン・ジョナス、バーバラ・クルーガーなどが参加した。

>>リチャード・セラら、トランプ大統領就任式の日にストライキ?
デヴィッド・ボウイ展で展示されたスターマンの衣装と『トップ・オブ・ザ・ポップス』の映像

■2月

・アメリカやヨーロッパで影響力を増すポピュリズム。これに対抗するため、ヴォルフガング・ティルマンスやアニッシュ・カプーア、ハンス・ウルリッヒ・オブリストといったアートシーンの第一線で活躍するアーティスト、キュレーターらが団結し、運動体「Hands Off Our Revolution」を結成した。

>>ヴォルフガング・ティルマンスやアニッシュ・カプーアら200人超が団結、アートでポピュリズムに対抗

・草間彌生が88歳の誕生日を約1ヶ月後に控えた2月22日、国立新美術館で過去最大規模の個展「草間彌生 わが永遠の魂」が開幕した。大型の絵画シリーズ「わが永遠の魂」132点をはじめ、初期から世界初公開まで約270点を展示した。

>>草間彌生のすべてがここにある。「草間彌生 わが永遠の魂」
「草間彌生 わが永遠の魂」会場での草間彌生

■3月

・3月15日にニューヨークのクリスティーズで藤田美術館所蔵の中国美術品オークション(イブニングセール)が開催。落札総額は2億6280万ドル(約301億円)に達し、予想を大幅に上回る結果となった。トップロットは陳容(ちんよう)の《六龍図》の約56億円。

>>藤田美術館の中国美術コレクション、総額300億円で落札
落札価格約56億円でトップロットとなった《六龍図》

■4月

・群馬県の太田駅前に建築家・平田晃久が設計した太田市美術館・図書館が4月1日にグランドオープン。地下1階、地上3階の4層構造。敷地面積は4641平米で、5つの鉄筋コンクリート構造の箱の周りを鉄骨構造のスロープが囲むというユニークな建築となった。

>>若手建築家・平田晃久が設計、太田市美術館・図書館が4月1日にグランドオープン
太田市美術館・図書館外観 Photo by Yoichi Onoda

・滋賀県で行われた地方創生セミナーで山本幸三地方創生大臣(当時)が観光振興を巡り「一番のガンは学芸員」と発言。多くの反発の声が上がった。

・銀座松坂屋跡地を含む2街区を融合させた巨大施設「GINZA SIX」が4月20日に開館。建築設計はMoMA新館や東京国立博物館平成館、京都国立博物館知新館など数々の建築を手がける谷口吉生。館内には草間彌生による巨大インスタレーションをはじめとするパブリックアートや、アートに特化した銀座 蔦屋書店などアートの要素をふんだんに盛り込んだ施設として、大きな話題を呼んだ。

>>草間彌生からチームラボまで。GINZA SIXでアートを楽しむ!
GINZA SIXの5階から見た草間彌生の《南瓜》

■5月

・ファッションデザイナー・川久保玲と「Comme des Garçons」(コム デ ギャルソン)に焦点を当てた展覧会「Rei Kawakubo/Comme des Garçons:Art of the In-Between」がニューヨークのメトロポリタン美術館で5月4日に開幕。1981年に初めてパリ・コレクションで行われた「コム デ ギャルソン」のショーから現在まで、約120着におよぶ同ブランドのウィメンズウェアで川久保の世界を概観した。

>>メトロポリタン美術館で出会う「川久保玲 / Comme des Garçons」の過去と現在
「Rei Kawakubo/Comme des Garçons:Art of the In-Between」会場風景 © The Metropolitan Museum of Art

・グラフィティ・アーティストとして知られるバンクシーがイギリス南部の港町・ドーバーで新作を発表。EUの旗「欧州旗」に描かれた12の星のうちの1つがハンマーによって打ち壊されていく様子が描かれており、イギリスのEU離脱(Brexit)を示唆するものとなった。

>>バンクシーの最新作がイギリス・ドーバーに出現。Brexitを批判

・ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ代表取締役の前澤友作が、5月18日に行われたサザビーズ・ニューヨークのイブニング・セールでジャン=ミッシェル・バスキアの《Untitled》を約123億円で落札。バスキアのオークション史上最高額となった。

>>123億円! ZOZO前澤友作がサザビーズでバスキアの《Untitled》を落札
前澤友作と落札されたバスキアの《Untitled》(1982)

■6月

・フランスの現代美術ギャラリー「ペロタン」がパリ、香港、ニューヨーク、ソウルに続き、6月7日に東京・六本木に新スペースをオープン。オープニング記念展は「ピエール・スーラージュ展」となった。

>>パリの巨大ギャラリーが東京に上陸。創設者エマニュエル・ペロタンに狙いを聞く

・5月6日から6月17日まで東京のギャラリー「ART&SCIENCE GALLERY LAB AXIOM」で開催された「BLACK BOX(#ブラックボックス展)」に3万人以上が来場。会場内での痴漢被害を訴える女性が現れるなど、展覧会の枠を超えた騒動を引き起こした。

>>「ブラックボックス展」とその騒動はなんだったのか? 主催者「なかのひとよ」に聞く

・名古屋市在住の個人が6億円で購入したバルテュスの《白馬の上の女性曲馬師》を愛知県美術館に寄贈。同作は7月から開催された「2017年度第2期コレクション展」で初披露された。

>>評価額6億円。個人がバルテュス作品を愛知県美術館に寄贈
ブラックボックス展で配布された「許可書」

■7月

・7月18日に、2019年に開催される「あいちトリエンナーレ2019」の芸術監督にジャーナリストとして知られる津田大介が就任することが発表された。テーマは「情の時代 Taming Y / Our Passion」。

>>あいちトリエンナーレ2019の芸術監督にジャーナリストの津田大介が就任決定

■8月

・1981年に開館した富山県立近代美術館が8月26日に「富山県美術館」として全面開館。建築設計は内藤廣、ロゴマークはグラフィックデザイナー・永井一正、スタッフユニフォームはデザイナー・三宅一生が担当した。

>>富山に新たなアートスポット。アートとデザインをつなぐ富山県美術館が8月に開館!

・迎賓館赤坂離宮が所蔵する藤田嗣治の天井画6点が、8月11日から29日までの期間限定で一挙に公開された。同作は、藤田が6点1組としてフランスの各地方を描いたもので、一度に展示されるのは今回が初めてとなった。

>>藤田嗣治による天井画、迎賓館赤坂離宮で全6点が一挙公開!
全面開館した富山県美術館

■9月

・横浜市中区にある複合文化施設「BankART studio NYK」が2018年4月に閉鎖されることが明らかになった。閉鎖理由は同施設を管理する日本郵船との契約更新ができなかったため。

>>BankARTが来年4月に閉鎖へ。日本郵船と契約更新できず

・2018年5月から開催される第16回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館キュレーターについて、再選考のプロセスで「社会通念上、誤解を生みかねない過程があった」として異例の再選考を実施。結果的に、再選考前と変わらずアトリエ・ワンの貝島桃代がキュレーターに選ばれた。

>>国際交流基金がヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展キュレーターを異例の再選考。結果は変わらず

■10月

・10月1日に東京都新宿区に草間彌生の個人美術館「草間彌生美術館」が開館。同館は鉄筋コンクリートの地上5階、地下1階構造。年2回の展覧会を通して、草間作品のコレクションを展示するとともに講演会などを開催する。開館記念展「創造は孤高の営みだ、愛こそはまさに芸術への近づき」は18年2月25日まで開催中。

>>「一生愛して」 草間彌生美術館開館で草間は何を語ったのか?
草間彌生美術館の2階に展示された「愛はとこしえ」シリーズ

・小田原市江之浦地区に杉本博司が「小田原文化財団 江之浦測候所」を開館。敷地面積は9496平米で、杉本が蒐集してきた古美術や、光学ガラスなどがふんだんに使用されており、杉本のこだわりが詰め込まれた施設となった。

>>杉本博司の原点と究極がここに。「小田原文化財団 江之浦測候所」がついにオープン

・現代アートの老舗雑誌である『Artforum』の共同発行人であったナイト・ランデスマンが性的嫌がらせで元従業員の女性から告発。シンディ・シャーマンやミランダ・ジュライといった第一線で活動すアーティストをはじめ、5000人を超えるアーティスト、キュレーター、研究者らが共同で「Not Surprised(私たちは驚きません)」と題した公開書簡を公表した。

>>アート界からもセクシャル・ハラスメントに抗議の声。シンディ・シャーマンら5000人超が公開書簡に署名

・全国386の国公私立美術館が加盟する「全国美術館会議」が、初となる「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」を採択、発表した。美術館のあるべき姿を示した11の原則と、それに対応する美術館関係者の11の行動指針が定められている。

>>美術館はどうあるべきか? 全国美術館会議が「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」を公表

・10月24日に杉本博司が文化功労者に選出。発表したコメントの中で「文化功労者として、これからも国威発揚を文化を通じて行っていく所存でございます」としたことが大きな波紋を呼んだ。

>>杉本博司が文化功労者に選出。「国威発揚を文化を通じて行っていく」
小田原文化財団 江之浦測候所の夏至光遥拝ギャラリー

■11月

・千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館が日本画展示を終了し、作品譲渡を進めることを発表。同館所蔵の日本画作品は鏑木清方や橋本関雪など約20で、同社によると、基本的には全点を売却する予定。

>>DIC川村記念美術館が日本画展示を終了。作品を全点譲渡へ

・11月11日にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビにルーヴル美術館の別館「ルーヴル・アブダビ」が開館。フランスの著名建築家、ジャン・ヌーヴェルによるデザインで、約8000個のメタル製の星で構成された直系180メートルのドームが全体を覆う。同館では600点の所蔵作品に加え、パリのルーヴル美術館をはじめとするフランス国内13の美術館・博物館から貸し出された300点が展示されている。

・レオナルド・ダ・ヴィンチが描き、最後の個人所有作品である《サルバドール・ムンディ》が11月15日、クリスティーズ・ニューヨークのイブニングセールで競売にかけられ、4億5031万2500ドル(約508億円)で落札された。これは美術品としては世界最高額となる。のちに購入者はアブダビ文化観光局だと判明した。

>>約508億円! ダ・ヴィンチ最後の個人所有作《サルバトール・ムンディ》が世界記録を更新
レオナルド・ダ・ヴィンチ サルバトール・ムンディ © Christie’s Images Limited 2017

・青森県弘前市の「吉野町煉瓦倉庫」が、2020年に現代美術館「弘前市芸術文化施設(仮)」としてオープンすることが発表された。総合アドバイザーには森美術館館長・南條史雄が就任。建築設計はエストニア国立博物館を手がけた建築家・田根剛が担当する。

>>レンガ倉庫が現代美術館へ。田根剛がデザインする弘前市芸術文化施設(仮)が2020年に開館
「弘前市芸術文化施設(仮)」外観イメージ。左からC棟、A・B棟 ©ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS

■12月

・写真に特化したSNS「Instagram」が2017年にもっともシェアされた美術館ランキング「Most-Instagrammed museums of 2017」を発表。フランスを代表する美術館であるルーヴル美術館が1位に輝いた。

>>世界でもっともInstagramシェアされた美術館は? 2017年のトップ10が明らかに

・ニューヨークのメトロポリタン美術館に展示されているバルテュスの《夢見るテレーズ》について、ネット上で撤去要請の運動が勃発。1万人以上の署名が集まったが、メトロポリタン美術館はこれを拒否した。

>>1万人が署名。バルテュスの《夢見るテレーズ》は撤去されるべきか? メトロポリタン美術館は拒否
バルテュス《夢見るテレーズ》(1938)のメトロポリタン美術館での展示風景