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INTERVIEW - 2017.8.8

【ギャラリストの新世代】
Open Letter 山内真・中庭佳子

2015年のオープン後、週末限定のギャラリーとして若手作家を中心に紹介。今年5月にはアーツ千代田 3331へと拠点を移し、作家とともにメッセージを発信する場を目指す「Open Letter」。ギャラリーを共同運営する山内真、中庭佳子に、いま2人が考えていること、今後の展望について話を聞いた。

現在はAI KOWADA GALLERYと共同で使用するスペース。今後、開廊日を増やすことも検討しているという Photo by Chika Takami

作家と私たちをつなぐ手紙

アーティストと協働する場

 もとは中学校であった校舎を改装し、「21世紀型オルタナティブ・アートスペース」をテーマに運営される文化芸術施設、アーツ千代田3331の一室に、「Open Letter」はある。このギャラリーを運営するのは、夫婦でもある山内真、中庭佳子。2人で活動の方向性を決めながら、山内は主に企画を行い、中庭はデザインワークなどを行っている。「以前もギャラリー運営に関わったことがあったのですが、そこを抜けてからは会社員一本に。以降ずっと、アーティストとの“場”を持ちたいと思っていました」(山内)。

 2015年6月渋谷にオープンしたギャラリーは今年5月、現住所へ移転。土日のみ開廊している。これまで紹介してきた作家は、「見えているもの、そのあり方」をテーマに、日用品などの匿名的なモチーフを、シルクスクリーンを使い様々な支持体に転写し空間を構成する長田奈緒、大量の淡い色彩と有機的な形態のドローイングを描き、自身の意識を超えたところでの形を生み出そうとする中島あかねなどの若手作家だ。

開かれた手紙、公開書簡

 「Open Letter」には、二つの意味が込められている。「作品というのは、いわばアーティストが綴る私的な手紙。見る人がそれぞれの解釈を通して作品のメッセージや考えに触れてほしいと思いました」(中庭)。

 もう一つは、市民団体が自治体に意見を述べるときなどに使用される「公開書簡」のニュアンスだ。「作品を通して、多くの人が共有しているであろう見えない課題を考察できる場にしたいです」(山内)。

 取材時に展示を行っていた是恒(これつね)さくらは、そんな「公開書簡」の意味合いが投影された作家のひとりだ。広島からアラスカを経て山形に移住した是恒は、現代社会で見過ごされがちな古くからの地域の習わしや文化を取り上げ、フィールドワークと取材を実施、テキストとともに刺繍や織物、立体作品、冊子などを作成。そのいっぽうで、山形のカルチャー拠点の運営にも携わっているという。「美術の文脈だけでなく、日々の多様な活動全体が、是恒さんの制作のベースにある。今後はそうしたアーティストに着目した展示・企画も増やしていきたいと考えています」(山内)。

取材時に開催していたのは、現代社会で見過ごされがちな地域の文化に着目、複合的な活動を行う是恒さくらの個展 Photo by Chika Takami

日常を起点に立体的、流動的に

 今後のギャラリーの展開として、「立体的、流動的に運営を行っていきたい」と二人は話す。「ギャラリーの中でできることは限られている。アーツ千代田3331という実験的なスペースの特徴を活かしながら、この場所を起点に活動を広げていきたいです」(中庭)。

 今後は、作家と来場者との対話の場を設ける企画、トークイベントなどを行い、より開かれた場となることを目指す。山内は、自身が好きな作家のひとりであり、ミニマルなインスタレーション作品などを手がけたフェリックス・ゴンザレス=トレスを例に、次のように話す。「トレスの作品は、個人的日常を表現しつつ同時に社会的・政治的な問題に接続させています。Open Letterが根ざすのも、日常。そこからの発見をうながすきっかけとなる場にしたいです」(山内)。

Photo by Chika Takami

もっと聞きたい!

Q.ギャラリー一押しの作家は?

 Open Letterのオープニング展でも紹介した濱野絵美さんです。濱野さんは銅版画の解釈や概念を広げようとするいっぽう、制作と日常の両立といった作家特有の悩みを制作のモチベーションにしている部分がある。ミニマルなスタイルと裏にある混沌のバランスが魅力的です(山内)。

濱野絵美 Random Composition 1.5(部分) 2017 Photo by Chika Takami

Q.思い出の一品は?

 バリー・マッギーのダギングです。自分はもともとストリートアートに興味があって、なかでもマッギーは論文のテーマにしたほど好き。ギャラリーの中でアートをやるのではなく、ギャラリーをストリートにしてしまうような、実践的なスタイルを尊敬しています(山内)。

Photo by Chika Takami

PROFILE
やまうち・しん
1978年生まれ。ニューヨーク市立大学大学院卒業後、広告制作会社を経てWEB制作会社モノサスにプランナーとして勤務。2015年に「Open Letter」を設立。

なかにわ・けいこ
大学卒業後、書店、WEB制作会社勤務を経て、桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科へ進学。山内と同じくモノサスでデザイナーとして勤務し、「Open Letter」を共同運営する。

 (『美術手帖』2017年8月号「ART NAVI」より)

information

Open Letter

住所:東京都千代田区外神田6-11-14 3331 Arts Chiyoda #211
電話番号:03-6803-2441(アーツ千代田3331)
開館時間:12:00~18:00(土日のみ開廊)
9月17日まで、濱野絵美の個展を開催。

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