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2017.7.8

【期待のアーティストに聞く!】
水木塁 関係性を解きほぐす、なめらかな面のあり方

スケーターとしての身体感覚や、展示の際の映り込みなどを作品に取り入れ、写真という枠にとらわれず平面や立体を考察してきた水木塁。7月15日からgallery αMで個展を開催する作家に、作品について聞いた。

文=野路千晶

Photo by Fuminari Yoshitsugu

 夜のスケートパークに大きくプロジェクションされた、真昼の動物園の風景。水木塁の《Flight in the cage》(2013)は、スケートパーク、動物園という二つの景色が合成されたかのように重なる写真を湾曲させて展示、写真はこちらに向かってなめらかなカーブを描いている。

 gallery αMにて7月15日から8月26日まで開催する展示では、3種類の新作を発表。そこには、スケーターでもある水木が頻繁に通ったスケートパークに置かれている、スケートトリックのための「箱」をモチーフとした作品もある。本作は「箱」の各面・地面をスキャニングするように撮影、コンピュータ上で1枚につなぎ合わせ大きな写真を制作し、高さ約2mほどのアルミニウム板にダイレクトプリント。ギャラリーの5つの柱にカーブ状に取り付けられたそれらの作品は、ハーフパイプのような形を想起させ、平面でも立体でもない「曲面」として鑑賞者の前に現れる。「曲面は、水平面と垂直面をなめらかにつなぐことで生まれる。写真や絵画が持つ平面性や正面性、彫刻・立体の垂直性を避け、曲面を使用することは、作品と空間の従来的な関係への自分なりの意思表明です」。

 いっぽうで、アルミニウムによって生じる、鑑賞者自身や背後の空間の映り込み。水木は、過去作にも意図的に取り入れてきた映り込みを「視覚を拡張させるためのひとつの像」と話す。「僕はスケートボードを通して身体感覚と向き合ってきました。作品自体が発するイメージに没入することよりも、現場性や生身の身体による鑑賞経験や、そのことで意識され、変化する身体感覚に興味があります」。作品、鑑賞者、空間。水木の作品は、三者のあいだをなめらかに行き来し、解きほぐしていく。

『美術手帖』2017年7月号「ART NAVI」より)