EXHIBITIONS

平山郁夫が描いた「奥の細道」-松尾芭蕉がみた石巻-

石巻市博物館
2022.05.20 - 06.26

平山郁夫 金華山の朝陽 朝日生命保険相互会社蔵

平山郁夫 金華山 黄金山神社本殿 朝日生命保険相互会社蔵

 石巻市博物館が企画展「平山郁夫が描いた『奥の細道』-松尾芭蕉がみた石巻-」を開催。東日本大震災後に再開館した同館で、日本画家・平山郁夫が描いた「奥の細道」と、松尾芭蕉が見た石巻市について紹介する。

 シルクロードの画家として広く知られた平山郁夫(1930〜2009)。「仏教伝来の道」を訪ね、画業の原動力にしていった平山は、時代が平成に入った頃から日本の「路」をテーマとして日本各地を旅した。本展では、東北の聖地を描いた「奥の細道」シリーズの全作品および「平泉」シリーズなどを展示する。

 日本の路をテーマとした作品のひとつ「奥の細道」、そのうち石巻市域を描いた《金華山の朝陽(ちょうよう)》《金華山 黄金山神社本殿》は、万葉集にも詠われた聖地・金華山のイメージを、島からのぼる荘厳な朝日で描いた名作だ。

 平山が円熟期に日本の原風景を描いた動機は2つある。まず、開発によって歴史ある風景が失われることへの危惧だった。日本の誇るべき自然と文化を描いて残したいという画家の想いは、世界の文化遺産の保存のために尽力した「文化財赤十字」の活動への熱意につながっている。もうひとつは、シルクロードから奈良へとたどってきた「仏教伝来の道」が東北を終着地に、さらに日本文化として浸透・成熟していった過程へのまなざしがある。

 また本展覧会は、平山が東北の聖地の魅力をどのように描いたのかを探るべく、「奥の細道」「平泉」シリーズのスケッチブックと素描作品を紹介。石巻でとったスケッチには、時間を追ってアニメーションのように早描きしたもの、木々の枝が風になびく様子や水の流れを、躍動感ある線で描き出したものなど、その場でしか感じられないものが巧みに表現されている。

 そして、シルクロードの画題に挑んだごく初期に描いた一対の作品《鄯善国妃子<楼蘭の王女>》《西域の馬》を初めて展覧会で同時展示。平山の「仏教伝来の道」は、もうひとつのライフワークであった「文化財赤十字」へと展開され、旧石巻文化センターでも行われた文化財レスキュー事業は、この「文化財赤十字」を支援する公益財団法人文化財保護・芸術助成財団の助成により実施された。本展では、平山が文化財保護・遺跡保存活動を行った遺跡の素描作品も、あわせて紹介する。

 さらに大作「流水間断無(奥入瀬渓流)」を公開。原爆症に苦しんだ平山は若き日に青森県を訪れ、「生きる喜び」を教えられたという奥入瀬渓谷の水と森の美しさ、その感動を35年の歳月をかけて描き上げた。この他、特別陳列では「牡鹿郡石巻全景眺望図」を初公開。石巻の歌枕の地の参考資料として、「毛利コレクション」から出展する本作は、松尾芭蕉が『おくのほそ道』に驚きを持って記した江戸時代当時の賑わい、町並みや寺社、また現在との違いなどを見比べて楽しむことができる。