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インテリア・アート

Interior Art

 この言葉が現代美術の文脈上で用いられる場合、その多くは、1980年代以降にヒロ・ヤマガタやクリスチャン・ラッセンらの大衆的な人気の中で売買されたポスターや版画のことを指す。それらを鑑賞するにあたっては、美術に関する特別な素養は必要とされず、誰しもが直感的に楽しむことができ、人々が求める「アート」として最適化されたかたち(西洋の街並みや南国の風景など)を伴って登場することとなった。そのためインテリア・アートには、「経済的な成功」と「美術史的な言及の欠如」という対照的な特徴が常について回る。

 しかし2000年代に入ると、美術家の中ザワヒデキが「ヒロ・ヤマガタ問題」を提唱したことを端緒にして、インテリア・アートを美術史の「外部」に置くという思考自体が「恥部」(大野左紀子)として批判的に言及されるようになった。その一方、「現代美術」からは対置される「インテリア・アート」の側においては、ヒエラルキーを欠いた戦後日本社会に最適化するかのように、美術館よりも一般家庭を積極的に選択した「民主的なアート」が志向されてきたという側面も否定し難く存在し、その志向性の鋭さはインテリア・アートが経済的な成功を収めたという事実によってあらかじめ裏付けられていたとも言える。したがってこの言葉は、用いる側が設定する文脈によって、その受け取られ方に大きな変化が生じるという点にも特徴を有している。

文=原田裕規

参照
『ラッセンとは何だったのか? 消費とアートを越えた「先」』(原田裕規編・著、フィルムアート社、2013)