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南画廊

Minami Gallery

 画商の志水楠男が設立した現代美術の画廊。もともと数寄屋橋画廊に勤めていた志水は山本孝と共に東京画廊の立ち上げに参画、1956年に独立して日本橋高島屋デパートのそばに自身がオーナーを務める画廊を開廊した。画廊の名前は「楠」の字から木へんを取って南画廊と名付けられた。こけら落としは駒井哲郎銅版画個展。日本の戦後美術の主要作家を発信するいっぽう、59年にフォートリエ展を開催。この個展は、会期中にフォートリエ夫妻を日本に招待するなど画商として命運をかける展覧会となり、南画廊が現代美術に転向する一大契機となった。

 また、同展をきっかけに志水は美術評論家の東野芳明の知己を得た。そのほか、今井俊満、オノサト・トシノブ、難波田龍起、工藤哲巳、加納光於、山口長男、菊畑茂久馬、宇佐美圭司、中西夏之、荒川修作らの個展を開催。海外作家ではサム・フランシス、ジャスパー・ジョーンズ、ルイーズ・ニヴェルソン、クリストなどの展覧会を企画した。東京画廊がヨーロッパ系の作家を主に発信したのに対し、南画廊はアメリカ人作家の紹介に力を入れて独自性を打ち出したと言われる。79年の3月に志水が急逝するまで約250本の現代美術展を開催した。

文=中島水緒

参考文献
『志水楠男と南画廊』、「志水楠男と南画廊」(刊行会、美術出版社、1985)
『日本現代美術先駆者志水楠男・南画廊の軌跡展』(西武百貨店、1983)