2018.5.16

京都大学の立て看板(タテカン)をギャラリーで展示。京都市立芸大で企画展「Re/place」開催

京都市が制定した景観条例にもとづき、京都大学が撤去した立て看板(タテカン)。ネット上でも賛否を呼んでいるこのタテカンをテーマにした展覧会「Re/place」が、京都市立芸術大学内の芸大ギャラリーで開催される。会期は5月19日、20日の2日間のみ。

展示風景 提供=小金沢智
前へ
次へ

 「立て看板」(通称タテカン)は、おもに大学において部活の部員勧誘や、催事の宣伝、あるいは学生運動のスローガンの主張など、様々な役割を持つものとして広く知られている。そのタテカンが、5月13日をもって京都大学から撤去されたことがネット上で様々な賛否を呼んでいる。

 京都大学の立て看板は、大学がある京都・百万遍の風物詩として、あるいは京都大学のアイコン的存在として、長年その姿をとどめてきた。しかしながら、京都市は立て看板が市条例に違反するとして、大学を文書で行政指導。これを受け、京都大学は承認団体による大学構内の指定場所への設置しか認めない規定を策定。その結果、大学を取り囲んでいた立て看板は撤去されたが、その撤去に抗議する立て看板が登場するなど、いまなお事態は収束していない。

 この立て看板撤去に対し、美術の側面から動きを見せたのが、ともに京都市立芸術大学3年に在籍する小野川耀心と大伴維則の2人だ。両者は、立て看板を「原状回復が可能である優しい表現手段」として、京都市立芸術大学内のホワイトキューブに設置。「Re/place」展として展示する。

 主催の二人は、本展企画意図としてこう語る。「立て看板は改変、継承をされてきた記憶装置(=コミュニティーアーカイブ)として自立したひとつの文化的表現であることをいち市民、一人の芸大生として確信しています。それが規制される現状に危うさを感じました。企画としては立て看板を借り受け、返却することに徹底したいと考えています」。

 展覧会名である「Replace」には「置き換える」という意味に加え、「元(の位置)に戻す」という意味もある。「立て看板は居場所を“置き変えられ”、“元に戻される”だけなのですが、鑑賞者がそれに何を感じ、考えるのかにこの展覧会の意義があると信じています」。本展には「生きている文化の立ち上がりと、いま規制されようとしている表現の豊かさを京都市立芸術大学のギャラリーの中で考えてもらう、そのきっかけになれる展示でありたい」という思いが込められている。

 主催者によると、「京大生は好意的に受け止めてくれる方が多く、応援されることが多い」とのこと。現時点で展示点数は未定だが、渦中の京都で本展がどのような反響を生むのか、注目したい。