2019.10.6

アーティストらが「あいち宣言(プロトコル)」原案作成。一般参加者交えた議論も

あいちトリエンナーレ実行委員会が、会期内での採択を目指す「あいち宣言(プロトコル)」。その原案がトリエンナーレ参加作家らから発表され、10月6日にはこれをもとに参加型の会議が行われた。

 

サナトリウムで行われた参加型会議の様子
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 「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」が展示中止となったことを受け、あいちトリエンナーレ実行員会会長として大村秀章愛知県知事が採択を目指す「あいち宣言(プロトコル)」。その原案が、アーティストらによってまとめられた。

 原案は、トリエンナーレ参加作家が中心となり、キュレーターや専門家のアドバイスを入れるかたちで作成。10月6日には、名古屋市内のアーティスト・ラン・スペース「サナトリウム」と東京のギャラリー「無人島プロダクション」で、参加作家(小田原のどか、加藤翼、高山明、毒山凡太朗、藤井光、村山悟郎)、専門家、一般参加者による参加型会議が行われ、原案の内容が議論された。

参加型会議の様子

 今回のアーティスト原案は、「文化芸術基本法」や全国美術館会議が定めた「美術館の原則と美術関係者の行動指針」などを参照に、「行動規範」として作成されたもの。

 大きな特徴は、「芸術の自由」という文言を盛り込んだことだ。原案では、「芸術の自由」は、「『表現の自由』に支えられる芸術家およびそれを送り出す美術館や芸術祭等の権利」「『知る権利』に支えられる鑑賞者の『芸術を享受する権利』」で構成されるとしており、「芸術への公的支援および助成は、支配を意味しない。またその受給は、服従を意味しない」などの文言が明記されている。

 また、「芸術家」「鑑賞者および芸術祭を支えるステークホルダー」「芸術監督およびキュレーター」「カルチュラル・ワーカー」について、それぞれの責務と権利を記載。「国や地方自治体等の行政」については責務のみを定めた。

 例えば「芸術家の権利」では、「表現の不自由展・その後」が他の参加作家に事前に共有されなかったことを鑑み、「芸術家には、自身が参加する展覧会の内容や文脈について、事前に知る権利がある」との文言が盛り込まれると同時に、「鑑賞者の観る権利への十分な配慮」をすることが芸術家の責務として明記されている。

 また「鑑賞者および芸術祭を支えるステークホルダー」では、「鑑賞者には、見て、聞いて、みずから体験する権利がある」など5つの権利を記載した。

 「芸術監督およびキュレーター」については3つの権利と6つの責務を記載。「キュレーションにおいて、出展作品の選択は、専門性にもとづいた文脈化であり、即座に検閲にはあたらない」とするいっぽう、「芸術監督やキュレーターが、作品選択を行うさいには、その文脈化の意図や背景を芸術家に説明し、検閲や自主規制がひろがらないよう十分な協議をもって実践する責務がある」(原文ママ)としている。

参加型会議の様子

 こうしたアーティスト原案をもとに行われた会議では、一般参加者から「美術館で起こることだけを想定して書かれている」とか、「愛知県の作家が関わっていないのでは」といった指摘がなされた。いっぽう、名古屋会場に参加した上智大学教授・林道郎からは「世界中から賛同を募るべき。起草委員会を設置し、早急にバージョン1を出すべきだ」との意見も出された。

 アーティストらは、この会議を受けて修正したものを「草案」としてまとめ、近日中にトリエンナーレ実行委員会側へ提出する予定。その後、トリエンナーレ参加作家から選ばれた小田原のどか、藤井光、村山悟郎の3名が、専門家や実行委員会とともに実際の採択案に向けた検討を行う予定だという。