2019.2.14

第22回TARO賞は檜皮一彦に決定。敏子賞は風間天心

岡本太郎の遺志を継ぎ、次代のアーティストを顕彰する岡本太郎現代芸術賞(通称TARO賞)。22回目の今年は、大賞となる岡本太郎賞には檜皮一彦が、岡本敏子賞には風間天心が選ばれた。

展示風景より、檜皮一彦《hiwadorome: type ZERO spec3》
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  岡本太郎現代芸術賞(通称「TARO賞」)は、岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」を問うためのアワード。22回目となる本展は、416作品の応募から厳正な審査を経て25作家が入選した。

 2月14日に川崎市岡本太郎美術館で行われた授賞式では、全入賞作品が発表。大賞となる岡本太郎賞には檜皮一彦(ひわ・かずひこ)が、岡本敏子賞には風間天心が選ばれた。

 檜皮一彦は大阪府生まれ、2016年京都造形芸術大学芸術大学大学院修了。受賞作《hiwadorome: type ZERO spec3》は、天井まで積み上げられた車椅子からなる構造体と、そこから発せられる光やダンスミュージックが、クラブ空間を彷彿させる。また、壁には、四肢に障害を持つ檜皮自身ともう一人の男性が、上半身を露わに接触する映像、その二人の身体が入れ替わる映像などが上映される、複合的なインスタレーション作品だ。

展示風景より、檜皮一彦《hiwadorome: type ZERO spec3》
展示風景より、《hiwadorome: type ZERO spec3》で上映される映像

 受賞に際して檜皮は「言葉で説明するのは得意ではないのですが、『hiwadorome(ヒワドローム)』は愛なので、自分からの一方的な愛をみなさんに受け取ってもらえたら嬉しいです。昨年末は心身ともに調子を崩していたので一時はTARO賞を辞退しようと思っていた。だけど粘り強く続けてよかったです」と喜びを表した。

檜皮一彦

 本作について、審査員のひとり、美術批評家の椹木野衣は「岡本太郎美術館の開館記念展が『多面体・岡本太郎 : 哄笑するダイナミズム』だった。檜皮さんの作品は多面体という言葉にふさわしく、ダイナミズムと力にあふれて素晴らしいと思いました」とコメント。また、入選作品の選定については「22世紀くらいの未来を見据え、“行き着く先にどんな作品があるか”という観点で選びました」と述べた。

展示風景より、風間天心《Funetasia》

 いっぽう、岡本敏子賞を受賞した風間天心は1979年北海道生まれ。アーティストであると同時に、北海道で禅宗の僧侶としても活動している。「自らがアーティストであるために僧侶であり続けている」と言う風間。受賞作の《Funetasia》は、葬儀の形態と役割を拡張するプロジェクトであり、あらゆる物事を「振り返り、感謝し、手放す」ために行うもの。本展では、平成という年号の葬儀としての《Funetasia》を発表している。

風間天心

 本作について審査員のひとりで美術史家、美術批評家の山下裕二は「日本の歴史全体を振り返ることを促しながら、日本人にとってのハイブリッドな宗教観も象徴している。僧侶としての実感を反映した、精緻でモニュメンタルな作品」とコメントを寄せている。

 また今回特別賞は、國久真有、武内カズノリ、田島大介の3名が受賞。

 2月16日から川崎市岡本太郎美術館で始まる「岡本太郎現代芸術賞展」ではこれら受賞作、入選作品をすべて見ることができるためチェックしてほしい。

展示風景より、國久真有《BPM》
展示風景より、武内カズノリ《こちふかば(ボッチ・川崎にて)》
展示風景より、田島大介《無限之超大國》(部分)
今回の受賞者、入選者と審査員。手前左から國久真有、檜皮一彦、風間天心、田島大介、武内カズノリ