ジェネシス・ベランジャー展「Another Man’s Treasure」

　ペロタン東京ではニューヨークを拠点とするアーティスト、ジェネシス・ベランジャーのアジア初個展「Another Man’s Treasure」を開催する。

　ベランジャーは1978年生まれ。ありふれたオブジェクトの形状を誇張し、それらからなる集合体を通して昨今の文化的状況を多く語る、静的な対話をつくり出す。その作品では物体を身体の代替品として取り扱い、心理的にかき立てられるイメージは進歩しつつも停滞する社会のジェンダーに対する固定観念や平等性を指摘するとともに、大量消費主義を批判している。

　本展タイトルは英語の慣用句「one man’s trash is another man’s treasure（誰かのゴミは、誰かの宝）」に由来し、ベランジャーはこの比喩を核に、ポップな立体作品に巧妙なアイロニーを注入する。

　会場に一歩足を踏み入れると、ストリートマーケット、つぶれた花屋、収集待ちのゴミなど、都市生活からインスピレーションを得た複数の作品によって構成されたシーンが展開される。次の展示室には一台のデスクが置かれ、職場の送別会を示唆するようなこれらの場面を通して、ベランジャーはオブジェクト一つひとつのあいだにある精神的な関係性をあらわにする空間を描く。

　色褪せたラグのうえに置かれた、歯を掴んだレンチ、ドーナツの穴を通り抜けるヘアカーラー、前ポケットにサンドイッチが入ったシャツ。いっぽう別のシーンに置かれた鉢植えと花束は街角の花屋を想起させ、また別のシーンではいっぱいに詰め込まれたゴミ袋とジャンクフードに紛れて、食料品買い出しの戦利品が入った紙袋《When Dad Does the Shopping（お父さんが買い物をしたとき）》がどさっと置かれる。

　ベランジャーは、かつては大切にされていたもの、持ち主が置き去りにしたように見えるこれらのオブジェクトを介して、見る者に「ゴミか宝か」という決定的な瞬間を探求させるとともに、私たちに「豊かにする経験」と「衰退させる経験」の認識を問うことを促す。