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ソピアップ・ピッチ

Sopheap Pich

 ソピアップ・ピッチは1971年カンボジア・バッタンバン生まれ。幼少期をポルポト政権下で育ち、クメール・ルージュから逃れるために79年からの5年間をタイ国境近くの難民キャンプで過ごす。このとき、NGOが運営するアートスクールに通い、絵画に興味を持つ。84年に一家でアメリカに移住。90年にマサチューセッツ大学アマースト校医学部に入学し、95年にファインアート専攻に転部する。その後、シカゴ美術館附属美術大学に進んでペインティングを専攻。99年に修了し、ニューヨークを拠点に活動する。

 絵画制作を模索するなかで故郷の風景を思い浮かべ、2002年に帰国。農村の暮らしや手仕事の美しさに感銘を受け、竹や籐(ラタン)、ワイヤー、蜜蝋など、地域に根ざした素材を用いて立体作品の制作を開始する。作品のモチーフは、木々や花などの植物、医学を学んだ経験から人体の器官、また都市の建造物など。竹やラタンをワイヤーで粗く編み込んだ有機的かつ幾何学的な形態は、軽やかさと重量感を併せ持ち、見る角度によって様々な表情を見せる。立体作品のほか、04年頃から再び絵画制作にも取り組んでいる。

 近年の個展に、「Sopheap Pich: from studio to fine art」(Gallery of the French Institute in Cambodia、プノンペン、2017)、「Cambodian Rattan: The Sculptures of Sopheap Pich」(メトロポリタン美術館、ニューヨーク、2013)など。第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展「VIVA ARTE VIVA」(2017)、第13回ドクメンタ(フリデリツィアヌム美術館、カッセル、2012)などの国際展に出展。日本では、17年に初個展「desire line」(小山登美夫ギャラリー/8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery、東京)を開催し、同年の「サンシャワー:東南アジアの現代美術展」(国立新美術館/森美術館、東京)に参加した。