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アルフレッド・シスレー

Alfred Sisley

 アルフレッド・シスレーは印象派の創立メンバーのひとり。セーヌ川やテムズ川沿いの景色を題材として好み、生涯でほぼ風景画のみを描いた。1839年フランス・パリ生まれ。イギリス人の両親を持ち、一家は織物を扱う貿易商を営む。18歳のとき、商業を学ぶためイギリス・ロンドンへ留学。イギリスの風景に触れ、またウィリアム・ターナーやジョン・コンスタブルの作品を目にして画家を志す。このとき、カミーユ・コローらバルビゾン派や、ギュスターヴ・クールベといったフランスの風景画家の作品も鑑賞する。60年にパリに戻り、シャルル・グレールの画塾に入門。戸外制作の基礎を習得し、ここでクロード・モネやピエール=オーギュスト・ルノワールなど、後の印象派と出会う。とくにルノワールと親睦を深め、フォンテーヌブローの森で制作をともにする。66年、風景画2点がサロンに初入選。初期の風景画ではコローの作風に傾倒し、抑えた色調で何気ない風景を詩的に描く。

 74年、第1回印象派展に出品。周囲の新しい表現方法に影響を受け、自作には控えめでありながら明るい色彩が加わる。シスレーの作品は穏やかで、水平線や垂直線を取り入れた確かな構図、画中の道路や橋を巧みに配置した、鑑賞者の視点を絵に導くような奥行きが特徴。同年代のモネやルノワールの陰に隠れがちだが、一貫して光と大気の描写を探求し、印象派の画法を真摯に守った。代表的なシリーズ「ポール=マルリの洪水と小舟」(1876)は洪水の場面でありながら、凪いだ雰囲気を持つ。天候の変化に興味を持ち、雪景色を描いた作品も多い。80年、フォンテーヌブロー近くのモレ=シュル=ロワンに移住。ほかの印象派の画家たちとは異なり、ほとんど旅をすることなく、田園風景の残る同地で制作を行う。83年にパリ、続いて89年にニューヨークのデュラン・リュエルの画廊で個展を開催。90年に国民美術協会のメンバーに選ばれ、97年にはパリで大回顧展が開かれる。99年没。